法律家応援ブログBy Snake

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権利の濫用?宇奈月温泉事件について

民法で習う「宇奈月温泉事件」について。権利の濫用とは。

 

 

 

1.宇奈月温泉事件概要

 

 宇奈月温泉では、7.5km先にある黒薙温泉から地下に埋設させた木製の引湯管を使いお湯を引いていた。

 この引湯管は、大正6年にA社が当時の価格で30万円を費やし、埋没させる土地の利用権を有償ないし無償で獲得して完成させたものである。

 しかし、この引湯管は、途中で利用権を得ていない甲土地を2坪分だけ経由してしまっていた。

 この土地は、Bの所有する112坪の乙土地の一部であるが、112坪の乙土地全体が利用が非常に難しい急傾斜地にあった。

 その後、この引湯管は、宇奈月温泉行きの鉄道を所有している黒部鉄道富山地方鉄道(富山地方鉄道)によって営まれていた。また、Bは、引湯管が経由している2坪を含めた112坪の乙土地全体を1坪あたり26銭でXに売却していた。

 乙土地を買ったXは、不法占拠を理由に、黒部鉄道に対して引湯管を撤去するか、さもなければ乙土地の周辺の土地を含めた計3,000坪を1坪7円総額2万円余りで買い取るよう求めた。

 黒部鉄道がこれに応じなかったため、Xは、黒部鉄道に対して妨害排除請求として引湯管の撤去等を求めて提訴した。(by Wikipedia)

 

 

 要はA、Bという二つの土地があってそれぞれA’、B’さんが土地を有していました。しかしA’さんの土地Aには不法にC温泉のパイプが通っていることを知ったXさんがA 、B両方をGetして二束三文の廉価な土地を高値でCに購入させようとした事例です。

 

 やっていることは単に土地を購入し、その土地にあったものをどかしてくれという物権、今回であれば所有権に基づく妨害排除請求権、の行使なので一見すると正当なのですが、あまりに売値が高すぎないかという話です。

 

 結果としては、権利の濫用にあたりXさんの妨害排除請求権は認められないということでした。

 

 なぜかというと、CさんとXさんの利益・不利益を考えたら、Cさんの不利益があまりに大きく、Xさんの利益は小さいと大審院(現在の最高裁判所)に判断されたためです。


民法判例百選I 総則・物権〔第9版〕: 別冊ジュリスト 第262号 (別冊ジュリスト no. 262)