今回の記事ではマクリーン事件と森川キャサリーン事件についてその事案のあらすじと判決の要旨を書いていきたいと思います。これらの判例は人権の享有主体性の問題で、外国人にもこれが認められるのかが問われたものです。
・マクリーン事件(最大判昭和53・10・4民集32巻7号1223頁)
(事実の概要)
アメリカ人のXは、出入国管理令に基づき、外国語教師として上陸許可を経て日本に入国した。このときに許された在留期間は1年であった。
時がたち在留期限が迫ったXは、在留期間の更新(延長)をY(法務大臣)に申請したところ120日間の期間の更新が認められた。
これに対し、Xは、改めて1年の在留期間の更新をYに求めたところ、Yは更新を許可しないという処分を行ったので、Xはこの処分の取消しを求めて提訴した。
なお、Yが、更新を認めないとした理由は、①Xが無届転職をしたこと、②様々な政治活動を行っていたことである。
(判旨)
結論としては、本件処分を合法とした。すなわち、Xの敗訴。
理由としては以下の通りである。
そもそも、国際慣習法上、外国人に入国の自由は保障されていない。
なので、国(法務大臣)に大きな裁量権がある。
したがって、「裁判所は、法務大臣の……判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠く等により右判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法であるとすることができる」という基準を立てた。
そして、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」であり、「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である」と述べた上で、今回のXの政治活動は憲法の保障が及ぶものだけど、Yの判断に裁量権の逸脱・濫用が認められないので、本件処分は合法と判断した。
・森川キャサリーン事件(最判平成4・11・16)
(事実の概要)
1977年、アメリカ人のXは日本人の男性と結婚して在留資格を得た。
1982年、登録証明書交付の際に当時義務付けられていた指紋の押捺を拒否した。
同年、休暇を利用して韓国に旅行に行くため再入国許可を申請したところ、法務大臣は、Xが指紋押捺を拒否していることを理由として、再入国を不許可とした。
Xは、再入国不許可処分の取消しと損害賠償を求めて提訴した。
(判旨)
マクリーン事件を引用して、外国人の再入国の自由について、「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない」と判示した。
以上がマクリーン事件と森川キャサリーン事件の概要です。
〈練習問題〉
①政治活動の自由は、在留外国人にも基本的に保障され、通説は、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等これを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶとしている。〇か✖か?
②わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されている。〇か✖か?
〈練習問題の答え〉
①〇 ②✖
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